晴れた春の午後、事務所のベンジャミンが新緑の枝葉を勢いよく四方に広げている。僕は自分の机で送られてきたばかりのレポートに目を落としていた。
「ひと昔前までの日本は、経済成長が常に右肩上がりであり、終身雇用制が当
たり前であり、学校を出てそこそこの会社に就職し、まじめに勤めあげさえすれば老後は世代間扶養による年金でもって悠々自適な生活を営むことが可能な社会、だと思われていた。それがバブル経済の崩壊以降、いつしか年金制度そのものが倒壊するのではないかと噂されるようなひどい社会になってしまった。定年後の60歳で満額支給だったはずの厚生年金がいつしか65歳となり、さらには70歳にならないと支給されないよう改悪された。ひどい話だ。年金支給とともに定年が70歳まで延びるというオプション付きならまだ許せもできるが、昨今の経済事情から考えると定年前の退職はあっても延長はないはず。
よーし、こうなったら開き直って支給されもしない年金などあてにせず、自分
の生活は自分で守る。つまり自衛していかないとダメだという意識を持ち、そ
れを可能とする生活設計を一刻も早く準備しておかないと・・・・・」
Bさんが事務所のドアを押し開けたのはこの次を読もうとしたときだった。
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